くちなしの道で貴女に逢ったとき
恋人を選ぶようにきらきらした眼差しで
咲きかける花を盗んでいたのです
甘い香りに濡れた指に白いくちなしが
恥じらうように身をまかせていました
足音に気づいた貴女は
ルノアールの少女にように
その花を乳房にあてがい
月のひかりのように見つめたのです
なんとも愛らしい姿のひとつの罪よ
ふふと笑うとふふと微笑んで
梅雨の夜の風が吹いて
いっそう甘く香るくちなしの道を
花の盗人は細い足で逃げて行ったのです