いましがた雨がやんで
冷たい泥土に赤い花が落ちた
わたしは秋の初めの碧空の下で
それは美しく咲いた花なのです
ひらりひらり舞う蝶やら
透明な羽を鳴らす蜜蜂が
先をあらそい飛んできた
まばゆい秋の日にわたしは輝いて
うらやむように秋草がゆれていた
音なし雨がふりだして
湿った泥土が赤い花を汚した
わたしは別れを告げないけれど
どこかで風が小さな声で囁いて
蝶が知ったら悲しむだろう
蜜蜂が知ったら泣くだろう
わたしはみんなの涙にたえられない
この世のあかしはなにも無いけれど
たしかに生きて たしかに咲いたんだ